アナザーストーリー in 展覧会「トミタリア富田一彦の世界 」
ボンジョルノ☀︎トミタリアです。
2015年長崎県美術館主催の展覧会「トミタリア富田一彦の世界 」
会期中のイベント特集で話を述べてきました。
その特集の最後に告知したように、
今回は「アナザーストーリー」をお話していきたいと思います。
展覧会に向けて着々と準備
イタリアから作品たちが届く
2015年1月から始まる展覧会は、
長崎県美術館の第1・2常設展示室合わせて広さ400㎡の会場でした。
その展覧会に向け、作品や商品たちを集めなければなりません。
海外のイタリアCOVO社(テーブルウェア)やARCADE社(ヴェネチアングラス)、
MOROSO社(家具)などTELで、展覧会開催の報告をしながら、
作品や商品の手配をお願いしました。
イタリアのクライアント達は、私の展覧会開催を心から喜んでくれました。
イタリア人は、誰かのために世話を焼くのが大好きで、
「Bravissimo!!!!!(ブラビッシモ)」と何度何度もも言いながら、
「あれしたわよ!」「こうだからね!」と今回も張り切って、
荷物の手配にご尽力いただきました。
そして荷物が、どんどん日本に届きました。
航空便の輸送、ヴェネチアングラスも割れることなく
皆無事に到着しました。
輸送のレベルの高さに感心しながら、
久しぶりに会う我が子を出迎える親のような気分で受け取りました。
そして、日本の取引先からもアトリエにある作品・商品群も長崎県美術館へ運搬します。
長崎県美術館に手配していただいた日通美術のトラックに積み込み、いざ美術館へ。
トミタリアの作品は、
デリケートなものや年代物、形がいびつな物も多いのですが、
日通美術の方に、あっという間に丁寧に積み込まれていきました。
お仕事である以上、丁寧に取り扱うことは当たり前かもしれませんが、
私の作品をこのように大切に丁寧に扱っていただく姿に尊敬の念を感じ、
素直に嬉しい気持ちと、そして感謝の気持ちが湧き出ました。
そして、眠り込んでいた作品たちの久々の登場に、
私も作品たちも歓喜しました。
そして日通美術さんには、設営でもご活躍いただき、大変お世話になりました。
イタリアからアシスタント
イタリア・ミラノにアトリエを構えていた2006年から
私のアシスタントをしてくれているイタリア女性のLaura(ラウラ)。
彼女は、私のスケッチを図面化してくれるとても優秀なアシスタントです。
初来日して、トミタリアの展覧会をお手伝いしてくれました。
Laura(ラウラ)は、展覧会のお手伝いの合間に
温泉や天ぷら屋・うどん屋に行きました。
展覧会期間なので、日本の名所などには案内できなかったのですが、
慣れない日本生活を楽しんでくれました。
日本滞在時は、半纏(はんてん)を気に入り、
着て過ごす姿がとても可愛らしかったです。
そして、展覧会や長崎浜屋の催事では、
イタリア人がいることでトミタリア展を
よりイタリアンに演出してくれたと思います。
天ぷら屋にて 半纏はイタリアでも着続けているようです
「トミタリア富田一彦の世界 」ポスターや図録
トミタリアのポスターや図録のデザイン
さて、展覧会にはポスターやチラシ・図録作成が必要不可欠です。
トミタリア展のポスターやチラシ・図録をデザインしていただいたのは、
グラフィックデザイナーの納富司氏 です。
納富氏は長崎県美術館のご推薦ご紹介でした。
クッションのGRULI(グルリ)が目を引く、
私の世界観をうまく引き出していただき、洗練された仕上がりとなりました。
その細部まで丁寧なお仕事ぶりには感銘を受けました。
ポスター・チラシの表面 ポスター・チラシの裏面
トミタリア展の図録 アトリエの大切な書籍棚には必須です
図録用の作品撮影
次は、そのトミタリア展の図録のための作品の撮影話です。
撮影カメラマンは、株式会社スタジオパッションの山﨑信一氏です。
こちら山﨑氏も長崎県美術館がご紹介ご推薦いただきました。
デザイナーなりたての頃の作品や長崎ゆかりの作品、新作に至るまで
3日がかりで、撮り下ろしだけでも80種のの作品を撮影していただきました。
山﨑氏は作品のポージングを撮影会場の初見で決める判断力に長けていました。
おかげさまで、作品に息が吹き込まれ、いい表情をしていました。
スピード感溢れる撮影に、3日間はあっという間に過ぎました。
生花の師範・伊達木百合子氏
私の作品には、いろんなタイプの花器があります。
昔からお付き合いのある長崎花浪漫・主宰の伊達木百合子氏に、
作品達の装いをしていただきました。
図録には、可憐に優雅に生けられた花器たちが掲載されています。
百合子さんは、数種類の花々木々を見繕って来られました。
どの花器に、どのように生けるか。
その場のインスピレーションで、華奢なお身体で強く素早く形を整えていく様は、
精神統一に近い空気感がありました。
痺れる空気感と躍動感ある生花に感無量です。
作品も生き生きと蘇りました。
富田一彦サイン会
記念講演会やトミタリア展図録の購入者と会った時は、
恐縮ながら、私の直筆サインをさせていただきました。
大浦小学校で行われた波佐見焼のワークショップ後は、
子どもたちパワーに押されながらサイン会という展開となりました(^ ^)
展示エリアストーリー
「GRULIクッション」エリア
納富氏に手がけていただいたポスターでも印象的なクッションのGRULI(グルリ)
展覧会会場でも、撮影可能ポイントのGRULIクッションは人気のエリアでした。
中央が開いているクッションなので、
このような何かが閃いたようなポーズで記念写真をしたり、
中央から顔を覗かせるユニークな記念写真を皆さん撮っていました。
「富田一彦の木工道具」展示エリア
私は千葉大学生の19歳から、秋岡師主宰の木工塾に通い続けていました。
実質上、秋岡師の最後の弟子と言われた私ですが、
その当時に使っていた木工道具も展示しました。
当時流行した『カッポジリ』の制作に欠かせない
首曲がりノミとばんかきガンナ(右から3番目+下ふたつ)。
*カッポジリとは、間伐材から彫り上げたうつわと制作方法です。
これらの刃は、三次曲面なので研ぎが難しいのですが、
S字の雁首が削り込むのに具合が良く、
秋岡師が江戸鍛冶「左久作」に依頼した特注品です。
造成や道路工事で手に入る、タダ同然の生木に体ごとぶつかって
3次元デッサンするうち、
・曲面を自在にコントロールするセンス
・樹種や硬さ・粘り
・木目の表れ方や割れをくい止める
このような知恵が身に付きました。
秋岡師から唯一贈られたこのノミを含め、
全部研ぎ上げて、この長崎県美術館での展示に備えました。
私が職人のように実際手で掘る制作が意外性でしょうか、
関心が高かったようです。
展覧会会場の様子
第1・2常設展示室合わせて広さ400㎡の会場図です。
テーマは『呼吸する船』
長崎は造船と交易の歴史ある街です。
私は長崎の港が一望できる南横手の洋館で育ちました。
往き来する船、建造修理される船を毎日眺めていた風景と展覧会の内装計画におけるイメージは、無関係ではないということです。
設営はまる3日深夜まで続きました。
オープニングまで残り時間がないとわかりながらも、細部まで確認しながらイメージに近づけて行きました。心配して夜に手伝いに出てきてくださった知人の百武大工さん。他にもたくさんの方が心配しくださり、応援しくださり、助けてくださいました。1月の寒い深い夜の設営。休憩もままならないまま作業が続きましたが、黙々と作業していただいた日通美装の方々、美術館関係者の方々の手際の良さと忍耐力には参りました。この大変さを乗り越えてからのオープンは、本当人生の中で価値あるものだと思えます。
そして、この空間全てが「トミタリア展」として現実になりました。
長崎県松浦市にある(株)稲沢鐵工の依頼で、私は階段をデザインしています。名前は『スカラッタ』シリーズです。
その階段達もお色直しして、会場入口に展示しました。
稲沢社長自ら設置にお出でいただき、
息子のような私の展覧会会場の他の設置のことも気がけていただき、
会場で温かく見守ってくださいました。
左:トミタリアの代表作品「VENIE (ベニエ)」シリーズ
VENIEシリーズの生みの親NUSSHAメンバーの皆様にも石川県から遥々ご来訪いただきました。
中央:こちらもトミタリアの代表作品「MILMIL (ミルミル)」シリーズ
カラフルな波佐見焼が印象的で、アイテムも豊富。
イタリアCOVO社アートディレクター時代の作品です。
右:展覧会に発表された新作「WAQWA (ワクワ)」シリーズ
石川県の我戸幹男商店からデザイン依頼された作品です。
最後に
心より深くお礼申し上げます
懐古ブログになりましたが、
長崎県美術館関係者を含む、開催+運営にご尽力頂いた4,000人以上の方々、
会期中にはるばるご来訪頂いた10,000人近くの方々、
メディアの番組やチラシやポスター、Webページなどをご視聴頂いた数十万人の方々、
会期に前後してトミタトーク&レッスンに参加して頂いた2,000人以上の子供たち、
会場で実際にお話しさせて頂いた1,000人余の方々へ
あらためて心より深くお礼申し上げます。